2014年3月26日水曜日

弟の死37

 弟から譲られた車の中のたばこの匂いも気にならないくらいに消えた。
 昨日、息子を乗せているときに不意に感じ、おもわず口にしたが、息子は私の気持ちを理解したのか、黙っていた。

 忘れていってしまうのか。
 自分自身にも震える。

 かわいかった幼い日の弟と大人になった弟の姿。
 写真でしか確認できない。
 さみしいと思う。

 死亡宣告をされて自宅に帰ってきてから、葬儀場に移るまでの時間。
 何していたのだろう。
 見つめた時間は、頬を擦った時間はみじか過ぎた。
 感触は戻らない。

 もっとこの世の姿を残しておきたかった。

 土気色になっていく弟の顔を写真に残すことはできなかった。
 悲しむ時間が少なすぎた。

 悲しむ心が深すぎて、どうしたらいいかわからなかった。
 通夜・葬儀は事務に気持ちが向いてしまっていたのかもしれない。
 親の代わりに動かなければならなかったのは確かだ。

 ひとり悲しみに暮れる瞬間は今じわじわと訪れている。
 自分がこの先正常な精神でいられるのか。
 前を向くことができるのか。

 遺志継げる自信がないのが本音。

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