2013年5月29日水曜日

角田光代さん・林真理子さんエッセイ

 それぞれ楽しんで読みすすめました。

 来世は女優・・・林さんの著作を一気に読み進め、忙しい充実した毎日を想像し、「この世でいちばん幸せで楽しそうなのは(お金持ちの奥さん)」とはっきり言い切る姿に、この方のブレない価値観を感じました。
 「そうだよなー、やっぱり」と林さんの住む世界よりずっと末端にいる私も思います。
 努力している姿も著書で読んできているので、そして講演会にも行ったことがあるので、余計に林さんのこの発言にリアリティを感じずにはいられません。
 パシリ体質というか・・・そのようなことが書かれたものを読んだことがあるが、『わがアウェィ』では、対比するタイプをビシリと切りすてている。
 

 世界中で迷子になって・・・角田さんの旅や日々のエッセイ。
 私も読後の感想を日記のように書いているが、「読後の感想など共有できるものではない」という一文にはハットさせられる。
 自分勝手につらつらと書いているのだが、よんでくれたらなーと期待する自分がいるからだ。
 全く恥ずかしいものだ。
 もう一度戒めた。
 日々に、地に足を着けた毎日に生活感を感じる。
 『500円のかなしみ』は、最近私も同じようなことをしたので、恥ずかしい・虚しい気持ちがリアルに実感できた。
 自由に使えるお金は雲泥の差」があるのに、レベルの差はあるにしても、感覚がわかる、頷ける。
 私は英語が喋れないので、1人旅で海外には行けないのだが。
 ここでも違いはあるのだが。
 
 『対岸の彼女』を読んだ時の「私たちは何のために歳を重ねるんだろう。生活に逃げ込んでドアを閉めるためじゃない。また出会うためだ。出会うことを選ぶためだ。選んだ場所に自分の足で歩いていくためだ。」という一文に背中を押されたあの頃から、共感できた言葉があるから。
 その言葉を探して、今日も読んでいるのだ。

  この本の最後の言葉は、私自身が腑に落ちたことばだった。
 「年齢を重ねて、自分に見合った旅をして、自分に見合った買い物をして、そうしてただひたすらに、「分」つまり強固な私になっていくだけだ。」

 またひとつ言葉がみつかった。

2013年5月6日月曜日

憤死


 綿矢りささん。

 表題作「憤死」脳裏に焼き付くストーリーのイメージに油絵絵の具で描かれた佳穂の顔が浮かぶ。
 それは私の作った佳穂の顔なのだけれど。
 なぜ油絵具かって言えば、厚いから。
 誰の土俵にも上がらない佳穂の天真爛漫さこそが強さだ。

 

セシューズ・ハイ 議員探偵漆原翔太朗


 天祢涼さん

 登場人物のキャラクターがたのしい。

 世襲議員の身ながら、嵐を呼ぶ言動に翻弄される秘書のつぶやき。

 何者にもとらわれない言動は本当の馬鹿か、天才か?
 読み終わっても掴めない実像はシリーズ化予想がされる。

 現実にはありえない流れの中で、現実にいる議員にイメージを重ねる。
 結局、特権がたくさんあるって事なんでしょう、議員には。
 庶民には手の届かぬお話です。

旅猫リポート


 有川浩さん
 遅ればせながら。
 何度読み返しても泣けました。

 ナナとサトルの旅は目的地の人達にそれぞれの大切なものを気づかせてくれる旅。
 物語の根底に流れる、人を思いやる気持ちが心に灯火をくれる。

 サトルのこころ。
 運命を受け入れ、関わる人々への感謝の気持ちを持ち続ける強さと優しさはどこから来るのだろうと考えながら読んだ。
 育児放棄の親から、愛情深い親に出会い、突然その親をなくしたサトル。
 現実を知らせる強い言葉にも心を閉ざすことなく相対する心の強さはどこから来るのだろう。

 相手を想う気持ちの深さ。
 相手に対する感謝の気持ち。
 相手が持つであろう自分への想いを汲み取る心の豊かさ。

 リポート04ノリコの中の、
 ナナがつぶやく悟との5年間のくだりは気持ちを揺さぶられずにいられない。

 登場人物が入れ替わり立ち代り語りかけつくる。
 そのなかでのナナのサトルへの思いが、歯がゆさが手に取るようにわかる。
 実写されるのかなー。
 

天翔る


 村山由佳さん
 乗馬耐久競技(エンデュランス)という競技をめぐる人間と馬との関わりの世界。

 様々な過去や苦い思いを心に抱えた人々の回復の途上が描かれているように感じた。

 逢いたくても逢えない人がいる。
 この世界では誰もが経験するだろう。
 届かぬ思いをどうしたらいい、そんなせつない胸の内を分かり合える人が身近にいることへの感謝を思った。

 その人を忘れないことが、生きている私たちに出来ること。
 
 忘れたい過去から逃げられないでいる人。
 誰にもわかってもらえない、知られたくない過去にうなされる日々。
 話して楽になるならば誰かに話せばいいけれど、話すことが全てではない。
 経験しなくてもいいことを経験してしまった人がいる。
 わかってほしい気持ちと、他人になどわかるわけがないという気持ち。
 何かに変えられないだろうか。
 私自身もまだ変えられないけれど、過ぎた日々の中で、振り返り「馬鹿モノ」とじぶんに投げかける言葉の強さは弱くなっていく。

 「馬鹿モノ」の自分は未だに生きている。
 それでも、大切なものに出会い、自分の愚かさを今でも反省し、忘れたくない事を忘れず、生き続けている。

 知らない世界はまだまだたくさんあって、愚かな自分に出会う人生の旅はまだ続いている。

 自分の周りにいる人達を大切にしていこうと思えた。

2013年2月23日土曜日

阿川佐和子の世界一受けたい授業

 タイトル通り、阿川さんのインタビュウ集。
 第一人者14人に奥義を学ぶと副題が付いている通り、小沢征爾さん、塩野七生さん、河合隼雄さん、野口聡一さん、五木寛之さん、養老孟司さん、安藤忠雄さん、大島優子さん、室伏広治さん、デーモン閣下、市川海老蔵さん、李登輝さん、阿川弘之さんと村上龍さん。

 それぞれの専門分野での活躍は周知の通りだ。
 その人達についてよく知らなかったり、違うイメージを持っていたりするが、インタビュー通りに受け止めると、やはり教えられることがたくさんあると思いました。

 その人の人生の中でのエピソードは、関係のない人には思ってもみないことだったり、考えられないことだったり、身近な人には知ることのない事だったりする。
 羨ましく思ったり、自分はまだまだだなと反省したり、こんな人がリーダーだったらいいのにと思ったり。
 なぜこういう話をみんなは知らないんだろう?
 こういう話をニュースやワイドショウやテレビは扱わないんだろう?
 などと思うことがある。
 見ている人たちが情報をほしがらないからなのかもしれない。
 情報量が多い人が最後に勝つと聞いたことがある。

 ‘自分の国を思う’そんな思いも普通の感覚で話ができればいいのにと感じている。

イノセントブルー

 神永学さん
 心霊探偵八雲シリーズの一作が静岡新聞の子供版に連載されてから読者になりました。

 今度は前世を旅するお話。

 登場人物の過去から前世を共有しようとする才谷梅次郎と名乗る謎の人物。
 ‘魂は引き合う’‘魂は生まれ変わっても、縁のある人と引かれあう’と前世の因縁が織り成す物語は不思議に安心する。

 それぞれを想像しながら、過去の物語を読み解いたり。
 現在をどう生きようかと迷う人々に幸あれと願う。
 悔いのない人生を送るために、諦めない。

 『過去は幻影としての刺激を保ちながら、その生命の光と動きを取り戻して現在となる』というボードレールの言葉により、忘れることで今生の生を全うしようとする愛すべき人間の姿が見えてくる。
 間違いを認めることは辛いことだが、そこから道が開ける。
 人生悪いことばかりじゃないと言われている気がした。

 

2013年2月13日水曜日

蛍草

 葉室麟さんの時代小説。
 『蜩の記』を読んだ後、読後の清々しさに魅了された。
 
 『蛍草』も、武士の時代の日本人というイメージだ。
 一本芯の通った人間の、読んでいて感銘を受ける描写に、‘日本晴れの読み心地!’と帯に書かれたキャッチフレーズがすとんと腑に落ちる。

 主人公菜々のひたむきな姿は、この時代に大切にされていた日本人の心だろう。
 登場人物たちの人物像や関係性はこに時代の世間の様子なのだろう。

 主家の子供たちのあどけなさや素直さに心洗われ、奈々を想ういとこの姿に切なくなり、仇討ちを許された菜々の立会にスカッとしたり・・・。
 読んでいても、「きっとなんとかなるんだ!!」と思えるのは気持ちがいいものだ。

 

2013年2月8日金曜日

シンプルに生きる~生きづらい時代を生きなおす方法

 柳田邦男さんと香山リカさんの対談集

 東日本大震災を挟んでの対談になり、日本人全体が大きな転換を迫られた事柄が起こった。
 3.11後の世界をどう生きるか?とよく問われるようになったが、‘生きづらさ’の解決は‘生きなおす機会として捉えることが大切だと締めくくられている。

 生きづらさの根底にあるものとして、生き物としての原点〈自分で行動を起こして何かを獲得する喜びと幸せ〉に気づくことが必要と結んでいます。
 『何者』かにならなくてはいけない、人と違う何かを持たなければいけない、効率的に物事を進めなければいけない、夢を持たなければいけない・・・。
 追い詰められていく現代人が思い込んでいる事柄だ。
 他人と比べる必要はなく、人から与えられるものではつまらない。

 生と死について、父親をなくしたばかりの香山さんの体験や、グリーフ・ケアにも造詣の深い柳田さんの持論は、誰もが迎える『死』を人生をより善いものにするものとしてとらえるためのヒントをたくさんふくんでいる。
 亡くなった人を忘れないことが一番の供養になると思う。
 その人が見えなくても、思い出を身近な人と語ったり、思い出すことでより近くに感じることもあるのではないか。
 『2.5人称の視点』とは、柳田さんが推奨する医療者としての立場だが、
 これは医療の現場だけでなく、世間一般でも必要なのではないか?

 東日本大震災ご、復興という言葉が何もかも許されるキーワードになっていた感があるが、
前の通りに戻すのが復興ではなく想像力を駆使することで想定外などという言葉に惑わされずに未来を見据えることが大切なのだろう。

 悲しみと向き合う時間の大切さも・・・。
 悲しむ権利も保証することも大切です。

 生きなおすためのヒント。
 「私は何のために生まれてきたのだろう」私自身もよく頭に浮かぶフレーズ。
 哲学者でもわからない問に悶々とするのはやめて、心を開いて、今をしっかり生きる。
 誰の人生でも、棺桶に入るまでどんなことが起こるかわからないものだ。

2013年2月6日水曜日

ことり

 小川洋子さん
 静かな時間が漂う、独特の世界に浸りました。

 ひとつのものがあれば物語を紡ぐことができると何かで読んだことがあります。
小川さんが言っていて、その当時読んでいた本の何かに潜んでいる物語が秘密めいて感じられた記憶があります。

 小鳥の小父さんの物語。
 私自身の日常の隣り合わせに存在する人々の日常。
 関わることのない自分以外の人の日常に対して、想像以上の何かがある。
 そんな文章です。

 ひとりの人の人生を、申し訳ないほど小さな事柄に愛おしさを感じさせる。
 小川さんの文章にいつも感じる。

 小父さんにだけわかる‘ポーポー語’を喋るお兄さんに深い愛情を持ち、お兄さんの世界と日常をつなぐ役目を担う小父さん。
 お兄さんの気持ちに寄り添い、お兄さんの世界を守りきった小父さん。
 お兄さんを見送り、お兄さんとの思い出の中に生きようとした小父さんの前に現れた小父さんだけの日常。
 出会い、別れ。

 幸せだったのか?
 もっと違う幸せを求めても良かったのではないか?
 理不尽な扱いに抗議をしてもいいのではないか?
 私は読みながら違う展開を願っていた。

 それでも、小父さんは自分の領分の中で、大切な時間を過ごしていたのだと思えた。

 「想像してみてください」という最近のドラマのいつものセリフが頭の中でこだまします。

前世探偵カフェ・フロリアンの華麗な推理

 大村友貴美さん
 題名に惹かれ読む。
 
 謎解きはディナー・・・好きの中1息子の本を探索中。
 幽霊や暗がりがまだ怖い息子の読める本がなかなか見つからず、赤川次郎さんなどを勧めようかと思っても、題名でアウト!
 『何者』を読みたいと傍らに置いてあった本を希望するが、まだ難しいだろうと思うし。
 
 そこで、題名から選びました。

 いい感じです。

 お姉系ママショウのキャラクターで、掴みはOK。
 短編の1つ1つも息子の好きな歴史モノも散りばめられていたり。
 
 人間の優しさが感じられる内容だと思います。

 人の話を聞く姿勢や思いやり、ひとを包み込むような優しさを持つショウのような人に出会いたいと思ったり。

 エンターテイメントとしても、時代が変わったり、事件だったり、ひとりの人間の問題だったり、と一気に読めます。
 先日読んだ、伊坂幸太郎さんの『死神の精度』もキャラクターが面白く、話の中で出てきた人物に繋がりがあったりしてどんどん読み進めるものが好きな私には楽しい時間でした。
 同じように楽しい時間を過ごせた一冊でした。
 

2013年1月22日火曜日

下に見る人

 酒井順子さん
 「2人いれば人間関係は出てくるものだ」と研修で聞いた言葉が今でも耳の残っています。

 著者自身が内省する中で、明らかにしていった人間の根本心理といったことなのでしょう。

 様々な項目において、上下や同類と異種の関係を、著者自身を基準として書かれています。
 人ごととして書かれていないところが著者らしい。

 エンガチョ、敬語、ドリフなど同年代の私は「そうだったなー」と頷きます。
 
 〈みんなちがって みんないい〉
 〈世界で1つだけの花〉
  
 世の中の人すべてが、今自分が持っている価値観と同じモノを持っているのではないこと。
 年齢・立場・状況により、人は変わっていくこと。
 相手も同じ人間だっていうことの気づいて生活していくことが大切なのだろうなーと私は思っています。

 だって、通常の人間関係の中で、私が「嫌い」と思っている人が、私のことを「好き」なわけはないのですから。
 私が下に見ている人が居たとしても、その人が生活していく上で何の支障も来さないのが、日常の中の人間関係だとただのパート主婦は実感しているのです。

捨てない知恵

 石黒智子さん
 生活様式の変化が流れとして掴めます。
  
 それは著者が、毎日の生活を大切に、こだわりを大切に、過ごしてきた時間を積み重ねてきた
結果なのでしょう。
 何のこだわりも突き通せぬ、いや・・・こだわりを持たない私には到底行き着かない領域です。
 美的感覚のない息子にしてしまった現実を見る度に、深く反省。反省だけで終わってしまう私。

 モノを減らし、気に入ったモノを大切にする。
 そんな生活が出来ないのはなぜなのか?
 理由を求めて、〈読み物サーフィン〉状態の私。
 モノを減らせない、モノを活かせない、モノを使いこなせない。
 結局、こだわりを持つ自信がない・・・。
 自分に自信がないってことだろうと思うわけです。

 せめて、1つでも、私にもこだわれるところがないかと読むのですが、旦那の親と暮らし、居候状態、お皿1枚自分の好きなものを使うことも出来ない・・・こんな状況が頭の中で、妄想爆発へと向かわせるのです。

 台所は主婦の城!
 そんなセリフが頭の中でこだまします。
 私の城は何処に!!!!!

 日々葛藤の毎日の中で、「いいなー」のオンパレード。
 こだわるには財力も必要です。
 パートのお金を貯めて、いつの日か
 こだわりを実現する何かをみつけようと虎視眈々と目論む私です。

 こだわるには、知識も大切。
 毎日を真面目に生きていく中で、つけていく知恵や知識を大切にする。
 というのを再確認しました。
 

正欲  朝井リョウ

 >作家生活10周年の著作。  大学生作家・サラリーマン作家と言われていた頃があったなと思う。  『正欲』  読み終わり考える。  読み取りの苦手な私は何が正しいのか?  作者の意図と違う感覚だと恥ずかしいと。  明日、死にたくない人の流れに乗るために思う。  このブログも登場人...