2013年2月23日土曜日

阿川佐和子の世界一受けたい授業

 タイトル通り、阿川さんのインタビュウ集。
 第一人者14人に奥義を学ぶと副題が付いている通り、小沢征爾さん、塩野七生さん、河合隼雄さん、野口聡一さん、五木寛之さん、養老孟司さん、安藤忠雄さん、大島優子さん、室伏広治さん、デーモン閣下、市川海老蔵さん、李登輝さん、阿川弘之さんと村上龍さん。

 それぞれの専門分野での活躍は周知の通りだ。
 その人達についてよく知らなかったり、違うイメージを持っていたりするが、インタビュー通りに受け止めると、やはり教えられることがたくさんあると思いました。

 その人の人生の中でのエピソードは、関係のない人には思ってもみないことだったり、考えられないことだったり、身近な人には知ることのない事だったりする。
 羨ましく思ったり、自分はまだまだだなと反省したり、こんな人がリーダーだったらいいのにと思ったり。
 なぜこういう話をみんなは知らないんだろう?
 こういう話をニュースやワイドショウやテレビは扱わないんだろう?
 などと思うことがある。
 見ている人たちが情報をほしがらないからなのかもしれない。
 情報量が多い人が最後に勝つと聞いたことがある。

 ‘自分の国を思う’そんな思いも普通の感覚で話ができればいいのにと感じている。

イノセントブルー

 神永学さん
 心霊探偵八雲シリーズの一作が静岡新聞の子供版に連載されてから読者になりました。

 今度は前世を旅するお話。

 登場人物の過去から前世を共有しようとする才谷梅次郎と名乗る謎の人物。
 ‘魂は引き合う’‘魂は生まれ変わっても、縁のある人と引かれあう’と前世の因縁が織り成す物語は不思議に安心する。

 それぞれを想像しながら、過去の物語を読み解いたり。
 現在をどう生きようかと迷う人々に幸あれと願う。
 悔いのない人生を送るために、諦めない。

 『過去は幻影としての刺激を保ちながら、その生命の光と動きを取り戻して現在となる』というボードレールの言葉により、忘れることで今生の生を全うしようとする愛すべき人間の姿が見えてくる。
 間違いを認めることは辛いことだが、そこから道が開ける。
 人生悪いことばかりじゃないと言われている気がした。

 

2013年2月13日水曜日

蛍草

 葉室麟さんの時代小説。
 『蜩の記』を読んだ後、読後の清々しさに魅了された。
 
 『蛍草』も、武士の時代の日本人というイメージだ。
 一本芯の通った人間の、読んでいて感銘を受ける描写に、‘日本晴れの読み心地!’と帯に書かれたキャッチフレーズがすとんと腑に落ちる。

 主人公菜々のひたむきな姿は、この時代に大切にされていた日本人の心だろう。
 登場人物たちの人物像や関係性はこに時代の世間の様子なのだろう。

 主家の子供たちのあどけなさや素直さに心洗われ、奈々を想ういとこの姿に切なくなり、仇討ちを許された菜々の立会にスカッとしたり・・・。
 読んでいても、「きっとなんとかなるんだ!!」と思えるのは気持ちがいいものだ。

 

2013年2月8日金曜日

シンプルに生きる~生きづらい時代を生きなおす方法

 柳田邦男さんと香山リカさんの対談集

 東日本大震災を挟んでの対談になり、日本人全体が大きな転換を迫られた事柄が起こった。
 3.11後の世界をどう生きるか?とよく問われるようになったが、‘生きづらさ’の解決は‘生きなおす機会として捉えることが大切だと締めくくられている。

 生きづらさの根底にあるものとして、生き物としての原点〈自分で行動を起こして何かを獲得する喜びと幸せ〉に気づくことが必要と結んでいます。
 『何者』かにならなくてはいけない、人と違う何かを持たなければいけない、効率的に物事を進めなければいけない、夢を持たなければいけない・・・。
 追い詰められていく現代人が思い込んでいる事柄だ。
 他人と比べる必要はなく、人から与えられるものではつまらない。

 生と死について、父親をなくしたばかりの香山さんの体験や、グリーフ・ケアにも造詣の深い柳田さんの持論は、誰もが迎える『死』を人生をより善いものにするものとしてとらえるためのヒントをたくさんふくんでいる。
 亡くなった人を忘れないことが一番の供養になると思う。
 その人が見えなくても、思い出を身近な人と語ったり、思い出すことでより近くに感じることもあるのではないか。
 『2.5人称の視点』とは、柳田さんが推奨する医療者としての立場だが、
 これは医療の現場だけでなく、世間一般でも必要なのではないか?

 東日本大震災ご、復興という言葉が何もかも許されるキーワードになっていた感があるが、
前の通りに戻すのが復興ではなく想像力を駆使することで想定外などという言葉に惑わされずに未来を見据えることが大切なのだろう。

 悲しみと向き合う時間の大切さも・・・。
 悲しむ権利も保証することも大切です。

 生きなおすためのヒント。
 「私は何のために生まれてきたのだろう」私自身もよく頭に浮かぶフレーズ。
 哲学者でもわからない問に悶々とするのはやめて、心を開いて、今をしっかり生きる。
 誰の人生でも、棺桶に入るまでどんなことが起こるかわからないものだ。

2013年2月6日水曜日

ことり

 小川洋子さん
 静かな時間が漂う、独特の世界に浸りました。

 ひとつのものがあれば物語を紡ぐことができると何かで読んだことがあります。
小川さんが言っていて、その当時読んでいた本の何かに潜んでいる物語が秘密めいて感じられた記憶があります。

 小鳥の小父さんの物語。
 私自身の日常の隣り合わせに存在する人々の日常。
 関わることのない自分以外の人の日常に対して、想像以上の何かがある。
 そんな文章です。

 ひとりの人の人生を、申し訳ないほど小さな事柄に愛おしさを感じさせる。
 小川さんの文章にいつも感じる。

 小父さんにだけわかる‘ポーポー語’を喋るお兄さんに深い愛情を持ち、お兄さんの世界と日常をつなぐ役目を担う小父さん。
 お兄さんの気持ちに寄り添い、お兄さんの世界を守りきった小父さん。
 お兄さんを見送り、お兄さんとの思い出の中に生きようとした小父さんの前に現れた小父さんだけの日常。
 出会い、別れ。

 幸せだったのか?
 もっと違う幸せを求めても良かったのではないか?
 理不尽な扱いに抗議をしてもいいのではないか?
 私は読みながら違う展開を願っていた。

 それでも、小父さんは自分の領分の中で、大切な時間を過ごしていたのだと思えた。

 「想像してみてください」という最近のドラマのいつものセリフが頭の中でこだまします。

前世探偵カフェ・フロリアンの華麗な推理

 大村友貴美さん
 題名に惹かれ読む。
 
 謎解きはディナー・・・好きの中1息子の本を探索中。
 幽霊や暗がりがまだ怖い息子の読める本がなかなか見つからず、赤川次郎さんなどを勧めようかと思っても、題名でアウト!
 『何者』を読みたいと傍らに置いてあった本を希望するが、まだ難しいだろうと思うし。
 
 そこで、題名から選びました。

 いい感じです。

 お姉系ママショウのキャラクターで、掴みはOK。
 短編の1つ1つも息子の好きな歴史モノも散りばめられていたり。
 
 人間の優しさが感じられる内容だと思います。

 人の話を聞く姿勢や思いやり、ひとを包み込むような優しさを持つショウのような人に出会いたいと思ったり。

 エンターテイメントとしても、時代が変わったり、事件だったり、ひとりの人間の問題だったり、と一気に読めます。
 先日読んだ、伊坂幸太郎さんの『死神の精度』もキャラクターが面白く、話の中で出てきた人物に繋がりがあったりしてどんどん読み進めるものが好きな私には楽しい時間でした。
 同じように楽しい時間を過ごせた一冊でした。
 

正欲  朝井リョウ

 >作家生活10周年の著作。  大学生作家・サラリーマン作家と言われていた頃があったなと思う。  『正欲』  読み終わり考える。  読み取りの苦手な私は何が正しいのか?  作者の意図と違う感覚だと恥ずかしいと。  明日、死にたくない人の流れに乗るために思う。  このブログも登場人...