2015年6月21日日曜日
絶唱および持たざる者
湊かなえさんおよび、金原ひとみさんのほん。
それぞれ阪神淡路大震災、東日本大震災の影響を受けているのかと思ったが、
読者として読み込みの甘さを実感している。
登場人物の変わっていく章を同じ風に思ったが、絶唱については5年もの月日を費やしたとのこと。
湊さんの出演したTVを偶然見て、前日に読み終わった本について語っていて驚いた。
主人公を支えてくれた人にモデルがあったとのこと。
書くためのきっかけを作ってくれた人がいたということ。
その人が完成前に亡くなってしまったとのこと。
切ない想いは、直に感謝と完成を伝えられなかったという事実について。
それでも伝えられる何かを伝えるべく前向きに進む、湊さんの姿に共感する。
私にとっての弟の死という別れも、こんな風に自分の意志として行動に結びつけることができたらどんなにいいだろうか。
持たざる者。
人間は自分の意志で責任を取る覚悟を持った時に強くなれるのだと教えてもらった。
それぞれの登場人物の弱さも、責任と自覚のなさからくる。
自分と重なる描写にどきっとした。
言葉だけでなく、イメージを広げさせてもらいました。
火花
芥川賞の候補になった。
すごい。
「世間を無視することは人にやさしくない」
この言葉が又吉さんの本質ではないかと感じ、少し見方を変えた。
NHKの経済学番組の姿を毎週見ていると、物事に真摯に向かおうとする感覚がいいと思う。
静かなリズムの中で、響く重厚な音という感じ。
王道を行く人々だけが道を作るのではなく、小さな石ころにしか思われない市井の人々の存在こそが枝葉を本筋にしていくのだとエールを送ってくれているように感じて読み終わった。
存在意義。
多くの名もなき人々は何を残せるのか。
弟の生きたあかしをどうしたら残せるのだろうか。
2015年6月1日月曜日
永い言い訳
西川美和さんの本
「愛すべき日々に愛することを怠ったことの、代償は小さくない」の文章にうなずく。
弟を亡くしてからの日々はこの言葉通りの日々だった。
けれど私は弟を想って泣ける。
主人公とは違う。
後悔先に立たず。
生きていれば身近な誰かを亡くす。別れが突然来ることもある。
生きていることの条理を他人事にしか感じていなかった自分の鈍感さに驚く。
人の人生は1日で変わってしまう。終わってしまう。
予想できない。
喪失の感情はうまく言葉に出来ず、誰かの言葉を捜しつづけている。
そうなんだと思う言葉に出会っては涙を流す日々はまだつづいている。
登場人物の年代だったころの弟がふと思い起こされた。
私が中3の時弟は中1で、隣の教室だった。
廊下でクラスメートと騒ぐ私を身体を傾げて見ていた弟の姿が脳裏に焼き付いている。
その後私は家を離れたので、中2から成人するまで弟と一緒に住むことはなかった。
私が離れている間に実家では様々なことが起こっていたが、私は知りもしなかった。
私が家を離れたせいで弟は家を離れられなかったようだ。
それが私には弟への引け目を感じさせていた。
たった2人の兄弟なのに他人以上に他人行儀だった。
声を掛けられなかった。
切ない。
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