2013年2月6日水曜日

ことり

 小川洋子さん
 静かな時間が漂う、独特の世界に浸りました。

 ひとつのものがあれば物語を紡ぐことができると何かで読んだことがあります。
小川さんが言っていて、その当時読んでいた本の何かに潜んでいる物語が秘密めいて感じられた記憶があります。

 小鳥の小父さんの物語。
 私自身の日常の隣り合わせに存在する人々の日常。
 関わることのない自分以外の人の日常に対して、想像以上の何かがある。
 そんな文章です。

 ひとりの人の人生を、申し訳ないほど小さな事柄に愛おしさを感じさせる。
 小川さんの文章にいつも感じる。

 小父さんにだけわかる‘ポーポー語’を喋るお兄さんに深い愛情を持ち、お兄さんの世界と日常をつなぐ役目を担う小父さん。
 お兄さんの気持ちに寄り添い、お兄さんの世界を守りきった小父さん。
 お兄さんを見送り、お兄さんとの思い出の中に生きようとした小父さんの前に現れた小父さんだけの日常。
 出会い、別れ。

 幸せだったのか?
 もっと違う幸せを求めても良かったのではないか?
 理不尽な扱いに抗議をしてもいいのではないか?
 私は読みながら違う展開を願っていた。

 それでも、小父さんは自分の領分の中で、大切な時間を過ごしていたのだと思えた。

 「想像してみてください」という最近のドラマのいつものセリフが頭の中でこだまします。

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