2015年6月1日月曜日

永い言い訳


 西川美和さんの本

 「愛すべき日々に愛することを怠ったことの、代償は小さくない」の文章にうなずく。

 弟を亡くしてからの日々はこの言葉通りの日々だった。
 けれど私は弟を想って泣ける。
 主人公とは違う。

 後悔先に立たず。
 生きていれば身近な誰かを亡くす。別れが突然来ることもある。
 生きていることの条理を他人事にしか感じていなかった自分の鈍感さに驚く。

 人の人生は1日で変わってしまう。終わってしまう。
 予想できない。
 喪失の感情はうまく言葉に出来ず、誰かの言葉を捜しつづけている。
 そうなんだと思う言葉に出会っては涙を流す日々はまだつづいている。

 登場人物の年代だったころの弟がふと思い起こされた。
 私が中3の時弟は中1で、隣の教室だった。
 廊下でクラスメートと騒ぐ私を身体を傾げて見ていた弟の姿が脳裏に焼き付いている。
 その後私は家を離れたので、中2から成人するまで弟と一緒に住むことはなかった。

 私が離れている間に実家では様々なことが起こっていたが、私は知りもしなかった。
 私が家を離れたせいで弟は家を離れられなかったようだ。
 それが私には弟への引け目を感じさせていた。

 たった2人の兄弟なのに他人以上に他人行儀だった。
 声を掛けられなかった。

 切ない。

 

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