医師であり芥川賞作家である。
還暦を迎え、出版会社の若き編集者との出会いが生んだ、自選エッセイ集。
読むのに時間がかかった。
それは読み進める内容が著者の歴史を前後するため私の中でいつのあたりかと年表を行き来する作業があったからだろう。
幼き日の生母との別れから、祖母との暮らし、父との確執、義母との関係、医大時代、研修医時代から勤務医になり人の死に自分を消耗させていた頃、パニック障害からうつ病へ移行した経過、脱却から病と共に生きる今までを、自らが選んだエッセイから収められている。
日々の暮らしの中で、身の回りに起こった出来事は、自分の身に置き換えたり、家族との関係を振り返ったり、本が与えてくれる世界に改めて思いを深くしたり。
著者の生活を覗き見している気分になったり。
小説を書き始めた頃、編集者に「よい小説を書くにはどうすればよいのでしょうか」と問い「まじめに生きること」と教えられた事・その編集者への想いを大切にする姿勢が医師としての日々と小説家としての日々を絆いでいるのだろう。
私にもパニック障害の友人がいる。その友人の苦しみを少し理解する必要があったのも、本書に出会った理由なのかもしれない。
2012年11月27日火曜日
登録:
コメントの投稿 (Atom)
正欲 朝井リョウ
>作家生活10周年の著作。 大学生作家・サラリーマン作家と言われていた頃があったなと思う。 『正欲』 読み終わり考える。 読み取りの苦手な私は何が正しいのか? 作者の意図と違う感覚だと恥ずかしいと。 明日、死にたくない人の流れに乗るために思う。 このブログも登場人...
-
>社会と世間の定義を鴻上さんがブレイディみかこさんとの対談で話していた。 これが私の頭に残り、日本社会では世間からはみ出ることは生きにくくなると腑に落ちた。 私自身も世間でしか生きてこなかったと思うし、世間なしでは今後も生きていくのは難しいだろう。 それほど無意識に入り...
-
>森さんの考え方が羨ましいと同時に好き。 片づけられない私はそんな自分に嫌気がさす。 そこでこの本の内容に励まされる。 片づけるだけの費用を残せばいいのだ。家族に。 だって捨てられないのに捨てなければいけないと迫られても無理だ。 物の片づけは想いがある個人がやっても無...
-
岸本葉子さん 人気エッセイストの初の小説です。 アラフォー!50代の女性が主人公の短編小説。 私より少~し先輩のお話ですが・・・大切なのは一期一会ですね!! 独身の、様々な事情を背負った女性達の話の中で、徐々に確信した言葉です。 『袖振りあうも多生の縁』ですか・・・こ...
0 件のコメント:
コメントを投稿