医師であり芥川賞作家である。
還暦を迎え、出版会社の若き編集者との出会いが生んだ、自選エッセイ集。
読むのに時間がかかった。
それは読み進める内容が著者の歴史を前後するため私の中でいつのあたりかと年表を行き来する作業があったからだろう。
幼き日の生母との別れから、祖母との暮らし、父との確執、義母との関係、医大時代、研修医時代から勤務医になり人の死に自分を消耗させていた頃、パニック障害からうつ病へ移行した経過、脱却から病と共に生きる今までを、自らが選んだエッセイから収められている。
日々の暮らしの中で、身の回りに起こった出来事は、自分の身に置き換えたり、家族との関係を振り返ったり、本が与えてくれる世界に改めて思いを深くしたり。
著者の生活を覗き見している気分になったり。
小説を書き始めた頃、編集者に「よい小説を書くにはどうすればよいのでしょうか」と問い「まじめに生きること」と教えられた事・その編集者への想いを大切にする姿勢が医師としての日々と小説家としての日々を絆いでいるのだろう。
私にもパニック障害の友人がいる。その友人の苦しみを少し理解する必要があったのも、本書に出会った理由なのかもしれない。
2012年11月27日火曜日
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