2013年5月6日月曜日

憤死


 綿矢りささん。

 表題作「憤死」脳裏に焼き付くストーリーのイメージに油絵絵の具で描かれた佳穂の顔が浮かぶ。
 それは私の作った佳穂の顔なのだけれど。
 なぜ油絵具かって言えば、厚いから。
 誰の土俵にも上がらない佳穂の天真爛漫さこそが強さだ。

 

セシューズ・ハイ 議員探偵漆原翔太朗


 天祢涼さん

 登場人物のキャラクターがたのしい。

 世襲議員の身ながら、嵐を呼ぶ言動に翻弄される秘書のつぶやき。

 何者にもとらわれない言動は本当の馬鹿か、天才か?
 読み終わっても掴めない実像はシリーズ化予想がされる。

 現実にはありえない流れの中で、現実にいる議員にイメージを重ねる。
 結局、特権がたくさんあるって事なんでしょう、議員には。
 庶民には手の届かぬお話です。

旅猫リポート


 有川浩さん
 遅ればせながら。
 何度読み返しても泣けました。

 ナナとサトルの旅は目的地の人達にそれぞれの大切なものを気づかせてくれる旅。
 物語の根底に流れる、人を思いやる気持ちが心に灯火をくれる。

 サトルのこころ。
 運命を受け入れ、関わる人々への感謝の気持ちを持ち続ける強さと優しさはどこから来るのだろうと考えながら読んだ。
 育児放棄の親から、愛情深い親に出会い、突然その親をなくしたサトル。
 現実を知らせる強い言葉にも心を閉ざすことなく相対する心の強さはどこから来るのだろう。

 相手を想う気持ちの深さ。
 相手に対する感謝の気持ち。
 相手が持つであろう自分への想いを汲み取る心の豊かさ。

 リポート04ノリコの中の、
 ナナがつぶやく悟との5年間のくだりは気持ちを揺さぶられずにいられない。

 登場人物が入れ替わり立ち代り語りかけつくる。
 そのなかでのナナのサトルへの思いが、歯がゆさが手に取るようにわかる。
 実写されるのかなー。
 

天翔る


 村山由佳さん
 乗馬耐久競技(エンデュランス)という競技をめぐる人間と馬との関わりの世界。

 様々な過去や苦い思いを心に抱えた人々の回復の途上が描かれているように感じた。

 逢いたくても逢えない人がいる。
 この世界では誰もが経験するだろう。
 届かぬ思いをどうしたらいい、そんなせつない胸の内を分かり合える人が身近にいることへの感謝を思った。

 その人を忘れないことが、生きている私たちに出来ること。
 
 忘れたい過去から逃げられないでいる人。
 誰にもわかってもらえない、知られたくない過去にうなされる日々。
 話して楽になるならば誰かに話せばいいけれど、話すことが全てではない。
 経験しなくてもいいことを経験してしまった人がいる。
 わかってほしい気持ちと、他人になどわかるわけがないという気持ち。
 何かに変えられないだろうか。
 私自身もまだ変えられないけれど、過ぎた日々の中で、振り返り「馬鹿モノ」とじぶんに投げかける言葉の強さは弱くなっていく。

 「馬鹿モノ」の自分は未だに生きている。
 それでも、大切なものに出会い、自分の愚かさを今でも反省し、忘れたくない事を忘れず、生き続けている。

 知らない世界はまだまだたくさんあって、愚かな自分に出会う人生の旅はまだ続いている。

 自分の周りにいる人達を大切にしていこうと思えた。

2013年2月23日土曜日

阿川佐和子の世界一受けたい授業

 タイトル通り、阿川さんのインタビュウ集。
 第一人者14人に奥義を学ぶと副題が付いている通り、小沢征爾さん、塩野七生さん、河合隼雄さん、野口聡一さん、五木寛之さん、養老孟司さん、安藤忠雄さん、大島優子さん、室伏広治さん、デーモン閣下、市川海老蔵さん、李登輝さん、阿川弘之さんと村上龍さん。

 それぞれの専門分野での活躍は周知の通りだ。
 その人達についてよく知らなかったり、違うイメージを持っていたりするが、インタビュー通りに受け止めると、やはり教えられることがたくさんあると思いました。

 その人の人生の中でのエピソードは、関係のない人には思ってもみないことだったり、考えられないことだったり、身近な人には知ることのない事だったりする。
 羨ましく思ったり、自分はまだまだだなと反省したり、こんな人がリーダーだったらいいのにと思ったり。
 なぜこういう話をみんなは知らないんだろう?
 こういう話をニュースやワイドショウやテレビは扱わないんだろう?
 などと思うことがある。
 見ている人たちが情報をほしがらないからなのかもしれない。
 情報量が多い人が最後に勝つと聞いたことがある。

 ‘自分の国を思う’そんな思いも普通の感覚で話ができればいいのにと感じている。

イノセントブルー

 神永学さん
 心霊探偵八雲シリーズの一作が静岡新聞の子供版に連載されてから読者になりました。

 今度は前世を旅するお話。

 登場人物の過去から前世を共有しようとする才谷梅次郎と名乗る謎の人物。
 ‘魂は引き合う’‘魂は生まれ変わっても、縁のある人と引かれあう’と前世の因縁が織り成す物語は不思議に安心する。

 それぞれを想像しながら、過去の物語を読み解いたり。
 現在をどう生きようかと迷う人々に幸あれと願う。
 悔いのない人生を送るために、諦めない。

 『過去は幻影としての刺激を保ちながら、その生命の光と動きを取り戻して現在となる』というボードレールの言葉により、忘れることで今生の生を全うしようとする愛すべき人間の姿が見えてくる。
 間違いを認めることは辛いことだが、そこから道が開ける。
 人生悪いことばかりじゃないと言われている気がした。

 

2013年2月13日水曜日

蛍草

 葉室麟さんの時代小説。
 『蜩の記』を読んだ後、読後の清々しさに魅了された。
 
 『蛍草』も、武士の時代の日本人というイメージだ。
 一本芯の通った人間の、読んでいて感銘を受ける描写に、‘日本晴れの読み心地!’と帯に書かれたキャッチフレーズがすとんと腑に落ちる。

 主人公菜々のひたむきな姿は、この時代に大切にされていた日本人の心だろう。
 登場人物たちの人物像や関係性はこに時代の世間の様子なのだろう。

 主家の子供たちのあどけなさや素直さに心洗われ、奈々を想ういとこの姿に切なくなり、仇討ちを許された菜々の立会にスカッとしたり・・・。
 読んでいても、「きっとなんとかなるんだ!!」と思えるのは気持ちがいいものだ。

 

正欲  朝井リョウ

 >作家生活10周年の著作。  大学生作家・サラリーマン作家と言われていた頃があったなと思う。  『正欲』  読み終わり考える。  読み取りの苦手な私は何が正しいのか?  作者の意図と違う感覚だと恥ずかしいと。  明日、死にたくない人の流れに乗るために思う。  このブログも登場人...